メジャーの公式戦も佳境に入りましたが、オリオールズの藤浪晋太郎投手(29)が、新天地でも常に前向きな姿勢で投げ続けています。7月19日にトレードが発表されて以来、わずか1カ月ほどですが、アスレチックス時代と同じようにファンからも「フジ」と呼ばれ、「すごくみんなに良くしてもらっています」と、すっかりチームの一員として溶け込んでいます。

オリオールズが東地区首位を快走していることもありますが、レギュラーの多くが20歳代前半と若いチームとあって、クラブハウスの雰囲気がとても明るいのは印象的です。今季、ここまで「スイープ(同一カード3連敗)」されていないほど安定した戦いが続いているわけですから、チームが明るいのも当然と言えば当然です。

現時点で、リードしている場面でも劣勢の展開でも登板するなど、起用法は確定していませんが、クローザーのバティスタが離脱したこともあり、今後もフル回転が期待されそうです。ただ、藤浪自身に不要な気負いは見られません。すでに53試合(3日現在)に登板するなど、疲労は蓄積しているはずですが、メンタル面では余裕すらうかがえます。

「今は、日々、体の状態も違いますし、その日のキャッチボールの中で、今日はこれで行こう、これが正解かなとか、割り切っています。毎日、同じフォームで投げられるわけないやん、という前提のもと、トライ&エラーじゃないですけど、自分の持っている引き出しを開けながら、どれかな、今日はこれかな、みたいに。もちろん、基本がありながらのことですけど、それが出来ているのが日々の細かい修正につながっているのかなと思います」。

広大な米国では気候も違えば、移動などで体調も異なります。藤浪に限らず、毎日、完璧な状態でマウンドに上がれることは少ないはずです。となれば、思考回路をアレンジするしかないとばかりに、固定観念にとらわれることなく、「トライ&エラー」の考えにいたったのが、藤浪にはプラスに働いたようです。

その一方で、今後はさらにしびれる試合が待ち受けています。若いチームだけに、ポストシーズン未経験の選手が多く、チームとしても真価が問われる時期を迎えます。

「1年目から本当に貴重な経験をさせてもらっていると思います」

重圧のかかる試合は大変でしょうが、裏を返せば選手冥利(みょうり)に尽きるはずです。だれもが経験できるわけではないチャンスですし、地区優勝からポストシーズンまで、何度でもシャンパンファイトを楽しんでほしいものです。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)

ダイヤモンドバックス戦で好投したオリオールズの藤浪晋太郎(右=AP)
ダイヤモンドバックス戦で好投したオリオールズの藤浪晋太郎(右=AP)