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眼科医が「レーザーによる白内障手術」をオススメする理由 | 富裕層向け資産防衛メディア - 幻冬舎ゴールドオンライン

眼科医が「レーザーによる白内障手術」をオススメする理由

白内障手術には、眼科医が手動で行う手術と、レーザーによる手術の2種類が存在します。今回は、『「見える」を取り戻す白内障手術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、なぜ手による手術よりも「レーザー手術」のほうがオススメだといえるのか、その理由を解説します。

レーザー白内障手術の優れている点

目はとても小さな臓器で、切開をするにも、レンズを挿入・設置するにも、ミリ単位、ミクロン単位の精度が要求されます。これらすべてを、眼科医が繊細な手作業により行っています。優秀な術者であっても、やはり人間ですから、疲れやその日のコンディションなどで手術の精度には若干のばらつきや誤差が出ることは否めません。


こうしたミクロン単位の正確性が求められる手術を、レーザーが代わって行うのがフェムトセカンドレーザーによる白内障手術です。当記事では、フェムトセカンドレーザーが優れていると考えられる点を、いくつかご紹介します(参照記事:白内障の治療には「レーザー手術」がオススメ…その理由とは?)。

1.精密な前囊切開により、眼内レンズの長期的な安定が期待できる

従来の眼科医の手による手術は、医師の経験と技術により左右される部分が非常に大きいという現実があります。医師も人ですから体調が手術に影響することも皆無ではありません。特に、多焦点眼内レンズを用いる場合、前嚢切開はできるだけ中心に決まった大きさの正円に近い切開をする必要がありますが、症例数をこなしている熟練の医師でも多少のバラツキは生じます。

また手で行う手術の場合、最初に、一番外側の角膜切開を行います。角膜に切れ目をいれた瞬間、眼球内部の圧が低下してゼロになり、パンパンに空気が入っていた軟式テニスのボールがひしゃげたようになります。目がひしゃげた状態では前嚢切開をすることは難しいため、眼球内の圧をあげるために粘弾性の高いヒアルロン酸を注入して、できるだけボールの表面を張った状態にして切開を行います。

一方のレーザー白内障手術では、角膜切開をする前に前嚢切開を行いますから、常にボールが適度に張った状態で切開することができます。もちろんコンピューター制御ですから、まるでコンパスで描いたかのような美しい正円を、前嚢の真ん中に切開することができます。

[図表1]手技とレーザーによる切開の比較

また、目の形状や位置などの計測・解析を行うガイダンスシステムとの相性が良く、切開の位置や大きさなどを半自動で設定することができます。人の目は、術中にどこが中心なのかを認識することは難しいのですが、ガイダンスシステムはリアルタイムに目の中心を表示します。レーザー白内障手術装置は、このガイダンスシステムの情報をフルに利用して1人ひとりの目に応じた再現性の高い操作を行うことができるのです。

2.切りたいところを人の手ではできない複雑なデザインで切ることができる

フェムトセカンドレーザーは、白内障手術で用いられる前は、レーシック手術や角膜移植などで用いられていました。なぜなら、角膜を人の手ではできないデザインで立体的に切開でき、角度や深さ、形をあらかじめ計画した通り、高精度に切開することができるからです。角膜を美しく切開すればするほど、術後の創口はぴたっとくっついて早く治ります。レーザーは産業において人の手では難しい精密加工の技術として用いられてきたものであり、医療においても特に眼科分野にマッチした技術なのです。

角膜も水晶体も血管の無い組織ですので切っても出血しません。フェムトセカンドレーザーは熱が出にくいため出血を止める力はありませんが、代わりに鋭利に切開する力が抜群に高く、角膜や水晶体の切開に向いています。人の手という束縛が無く、自在なデザインで切ることが可能です。

3.角膜内皮細胞へのダメージが少ない

角膜内皮細胞は、角膜のいちばん内側にある細胞で、角膜を透明に保つ役割を果たしています。角膜内皮細胞はシート状にきっちり規則的に並んでおり、角膜の水分の排出機能を司っています。角膜の余分な水分を目の中に排出し常に一定の水分が角膜に保たれる結果角膜は透明でいられるのです。

[図表2]角膜の構造

実はこの角膜内皮細胞の数は、生まれたときの状態がマックス値で、1平方ミリメートルあたり3000個以上が正常とされています。角膜内皮細胞は、年齢とともに少しずつ減っていきますが、角膜内皮細胞は増えることができないため、一度減れば元に戻りません。そのため角膜内皮細胞が一定以上減ってしまうと、余分な水分が排出されずにむくんだ状態となり、角膜が白く濁ってしまうのです。一般的に1平方ミリメートルあたり500個を切ると、角膜に濁りが生じるとされています。これを水疱性角膜症といいます。

角膜内皮細胞が減少してしまう要因にはいろいろありますが、加齢、コンタクトレンズの長期使用などがあります。

実は、白内障手術でも角膜内皮細胞が多少減少してしまいます。白内障手術では、濁った水晶体を超音波の力で粉々に砕いて取り出しますが、このときもっとも気をつけなければならないのは、超音波のエネルギーによる角膜内皮細胞へのダメージです。特に白内障が進んで水晶体が硬くなれば硬くなるほど、高い超音波エネルギーを長い時間使用することが必要になります。その衝撃により、角膜内皮細胞が減少してしまうことになりかねません。

しかしレーザー白内障手術では、レーザーであらかじめ水晶体を細かく分割しておくことで、使用する超音波の量を4〜5割程度削減することができます。そのため角膜内皮細胞へのダメージも最小限にすることができます。

4.難症例では前囊切開や水晶体破砕がしやすい

白内障が進行していると、手術の難易度は当然ながら高くなります。

◇水晶体が急速に膨張する白内障(膨化白内障)

白内障の中には、急速に進み水晶体の中味が溶け出して水晶体が膨満してくる膨化白内障があります。前嚢切開が難しく、切開を入れたとたんに強い内圧のために亀裂が水晶体周辺に走るのです。亀裂が水晶体の後ろに回り込むと卵を割ったように水晶体の核が目の奧(硝子体腔)に落ちていきます。レーザー白内障手術による前嚢切開は、この亀裂が走るのを防ぐ効果があります。

[図表3]膨化白内障

◇水晶体がグラグラ(チン小帯断裂)のケース

安全に白内障手術ができるのは、水晶体を固定している無数の線維であるチン小帯が健全であるからです。水晶体が安定して動かないからこそ、水晶体に対する手術操作が術者の思い通りに行えるのです。

チン小帯

チン小帯

チン小帯が切れていると水晶体は不安定になり、前嚢切開、核分割、超音波乳化吸引、皮質吸引が難しくなり、手術操作そのものがチン小帯に負荷をかけ、さらに断裂を広めてしまうという悪循環が起こります。

さらには、支えの無い水晶体の袋は簡単に超音波プローブに吸い込まれて、破損しやすくなります。操作が雑になると水晶体の後ろにある硝子体も脱出してきてピンチになります。

[図表4]チン小帯断裂による水晶体亜脱臼の症例

レーザー白内障手術は、チン小帯に負荷をかけることなく前嚢切開ができます。核をあらかじめ細分割することができるため強いパワーや吸引をかける必要がなくなるため、水晶体の袋を吸い込むリスクが減ります。

◇水晶体がカチコチになっているケース

また水晶体の粉砕でも、進行した核白内障では水晶体がカチコチになっているため、通常の手による手術では核分割が難しく超音波のエネルギー量も時間も多く必要になります。

ここで少し、水晶体についてご説明します。水晶体の袋の内側、いちばん表面に近いところには、水晶体上皮細胞という透明な細胞が一列に規則正しく並んでいます。この細胞は水晶体の中身である線維細胞を生涯にわたって産生します。そのため、水晶体の中には線維細胞が木の年輪のように重なっており、皮質とよばれる部分を形づくっています。

皮質は柔らかい組織ですが、加齢とともに細胞核が失われた線維細胞がどんどん積み重なってくるため、古い細胞が中央に集積され、次第に硬い「核」という部分ができます。

この核が濁ってくることで起こる白内障のことを、核白内障と呼びます。硬さにはグレードがあり、グレード1と2が初期、グレード3が中期の白内障、グレード4、5は重度の白内障となり、4の後半から5にかけては「ハイリスク症例」になります。

[図表5]核白内障グレーディング

グレード5になると石のようにガチガチに硬いのに加えて、ニカワ(硬くなったゼラチン)のような弾力性のある硬さになるのが特徴です。このようになると、通常の方法で核を分割するのに手間取り破嚢のリスクが高まります。

通常の手による手術では、核が硬くなりすぎていると、通常より高いエネルギーの超音波を長時間当てなければならなくなり、角膜内皮のダメージが増えるリスクがあります。水晶体を砕いて吸引するつもりが、後ろの袋(後嚢)まで吸引して破いてしまうリスクが高くなります。袋が大きく破れてしまうと、中に眼内レンズを固定することができなくなります。これは、多焦点眼内レンズでは致命的で、あきらめて単焦点眼内レンズに変更しなければなりません。

袋が大きく破れると、眼内レンズの固定が難しくなってしまう

袋が大きく破れると、眼内レンズの固定ができなくなってしまう

しかしレーザー手術なら固くなった水晶体を予めレーザーで細かく切っておく(分割しておく)ことができるため超音波のエネルギー量も、砕くための時間も最小限にすることができます。

5.もともとあった乱視を減弱する正確な切開が可能

従来の手による白内障手術では、術者の切開しやすい方向から切開創を作成していることが多いことをご存じでしょうか。それは、いつも同じ位置で切開した方が安全で手術が速くできるからです。

白内障の手術では、手術時間が短いことがいいことのように喧伝されていますが、乱視を治すことには、マイナス面もあります。白内障で角膜を切開することは、わずかながら新しく乱視(惹起乱視:じゃっきらんし)を作ることになりかねないのです。

しかし、患者さんにもとからある「乱視の方向」に、手術により生じる惹起乱視を合わせれば、乱視を減らすことができるのです。

少し難しい話になりますが、乱視には垂直方向の曲率が強い直乱視と、水平方向の曲率が強い倒乱視があります。この曲率の強い方向から角膜の切開創を作成すること(強主経線切開と呼びます)で、強い方の曲率が緩み患者さんが元々もっている乱視を減らすことができます。

[図表6]乱視の種類

[図表6]の矢印の方向が強主経線切開をする方向になります。角膜のカーブの一番強い方向(強主経線)で角膜の切開創を作成します。乱視が軽度ならこの方法で対応できます。

レーザー手術が導入される以前より、曲率の強い方向からの角膜の切開は行われていましたが、ガイダンスシステムが使用されるようになってから、さらに正確な強主経線切開が可能になりました。強主経線からの手術は、必ずしもやりやすい部位では無いため、手の動きが難しくなり、かなりの熟練を要します。

レーザー白内障手術では、他にも、角膜内部に角膜弧状切開とよばれる減張切開を行い、乱視を減らすこともできます。さらに強い乱視には、乱視矯正用のトーリック眼内レンズを用います。白内障手術で乱視を治すとは、一人ひとりの目に合った乱視矯正方法を選択することなのです。

板谷 正紀

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長

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June 29, 2020 at 03:09AM
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