
ニューヨーク・メッツの千賀滉大は8月19日、敵地セントルイスでのカージナルス戦で今季10勝目を挙げた。7回を2安打1失点に抑えての勝利で、今季の防御率3.19はナ・リーグ5位、被打率.211は同4位。世界最高峰のリーグでの1年目で、30歳の日本人ルーキーは確かな足跡を残している。
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「きょう1日は僕にとってすごく大切な1日になった」
13日の試合後、自身のロッカー前で千賀が姿勢を正してそう繰り返していた姿が印象深い。この日、両リーグを通じて最高勝率を残しているアトランタ・ブレーブスと初対決。MVP候補のロナルド・アクーニャ、この時点では大谷翔平をも上回るメジャー最多の本塁打を打っていたマット・オルソン、2年連続オールスター出場のオースティン・ライリーを軸に、20本塁打以上の打者を6人も擁する強力打線と真っ向勝負を演じた。
日本でプレーしていた頃からメジャー入りを目標にしていた千賀にとって、節目となる先発登板だったのだろう。「野球を好きな人が見たら笑いが出るくらい」というスター軍団を相手に、千賀は粘りの投球で6回を4安打3失点で勝ち星を手にして見せた。

「抑えた感じはない。打ち取った当たりでも(打球速度は)100マイルを超えていました。満足できるような内容ではなかった」
試合後、千賀自身がそう語った通り、制球が定まらなかった一回表に3点を許すなど、完璧な投球だったわけではない。それでも序盤以降はうまく立て直し、初回2死から五回2死まで13打者を連続で仕留めた。100マイル近い快速球、決め球の〝お化けフォーク〟だけにこだわらず、スライダー、カーブも上手に使って修正したピッチングは成熟度が感じられた。
千賀が所属するメッツは激動のシーズンを過ごしている。メジャー1の年俸総額が費やされながら、故障と不振に苦しんだチームは地区最下位争いをするほどの低迷。今季の上位進出が難しいと判断すると、フロントはトレード期限にジャスティン・バーランダー、マックス・シャーザーという2大エースをはじめとする主力選手を次々と放出するという大なたを振るった。
バーランダー、シャーザーらの存在を〝メッツ入りを決めた理由〟の一つに挙げていた千賀は、チーム解体には「正直、寂しい気持ちもありました」と本音を吐露していた。それでも「僕がやることはチームが勝つために投げるだけ。それだけです」とベストを尽くすことを誓い、実際に安定した投球を続けている。

メジャー1年目でオールスターに選出された千賀は、押し出されるようにメッツの新エースに就任。メジャーの強打者を圧倒できる球威を持った日本人右腕は、誤算続きだったチームの数少ない光明になっている。
何よりも心強いのは、いきなり一定の成功を収めた後でも、千賀が満足しているようにはまったく見えないこと。上記通り、ナ・リーグ制覇の本命とされる強敵ブレーブスから勝利を挙げた際も、納得はしていなかった。すぐにまた今後の対戦に目を向けていたのは象徴的だろう。
「こういう相手に投げるためにアメリカに来たんだなと思う日は、もう何日か前から違う自分がいる。この強いチームに対して、自分の何が通用して、何が足りないかというところがはっきりとわかった。このチームをしっかり抑えられるようになることが今の僕の目標です」
ブレーブスとは今季最後のシリーズだっただけに、「今年対戦できてよかった」という言葉は正直な思いだったはずだ。メッツと5年契約を結んだ千賀にとって、優勝を目指すならブレーブスは絶対に倒さなければいけない相手。謙虚さとモチベーションを保ち続ける千賀なら、こういった強豪としのぎを削ることで、まだまだ向上できる。今季終盤も力強い投球で締めくくり、今後、メジャーの一線級投手としてどれだけ成長していってくれるかが今から楽しみだ。
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