
全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病のALSは、道内に400人あまりの患者がいます。 症状が進み自力で呼吸ができなくなると、生きるためには手術を受けて人工呼吸器をつける必要がありますが、患者団体によると患者のおよそ7割が手術を受けない選択をしているといいます。
ALSの患者たちが“生きる選択”をためらうのはなぜなのか。私が3年近く交流している1人の女性が、去年、悩んだ末に手術を受ける決断をしました。その過程を取材させてもらいました。
“生きる選択”へのためらい

清しお子さん(65)は、4年前にALSと診断され、今は下半身がほとんど動かせません。外出や日常生活には周りの介助が必要で、症状は日々進行していきます。
去年からは「呼吸が苦しくなってきた」と話すことが多くなってきた清さん。呼吸をする筋肉が徐々に弱まっていて、十分に呼吸ができないため、日常的に呼吸を補助するマスクが欠かせなくなっていました。

ALSが特に過酷な病気だと言われている理由の1つが、本人の意識ははっきりしたまま全身が動かなくなっていくという症状です。呼吸をする筋肉も弱まると、生きるためには、のどを切開して人工呼吸器を使用することになります。手術を受けて人工呼吸器をつければ24時間の介護を受けながら生きていくことができます。しかし、患者団体によりますと、家族の介護負担がさらに重くなることや自分の声が出せずコミュニケーションが取りづらくなることなどを理由に、およそ7割の患者が手術を受けることを望まない現状があるといいます。
“生きる手術”支えが後押し

診断を受けた当初、清さんも夫の介護負担を心配して手術は受けないつもりでした。
「自分が親を見てきたから介護をする人の大変さがわかる。自分の家族にその大変さを強いることはできない。手術はしないと思っていた」と当時の胸の内を明かしてくれました。
そんな清さんが手術を受けることにしたのは去年。決断を後押ししたのは夫の雅英さんでした。

雅英さんは「ALSだとわかったとき、妻は僕に『呼吸器もつけないし、そのままにしてくれ』と言った。やっぱりこうして夫婦でいたら、いなくなるのはきつい。生きていてもらったほうがいい」と振り返りました。その隣で清さんは「ありがとう、お父ちゃん」と
穏やかに語りかけていました。

こうした支えに加えて、障害者のコミュニケーションを支援する技術の進歩も清さんを後押ししました。録音した自分の声で文章をつくってくれるアプリを知り、声を失ったあとも生活の不便さが軽減されると考えるようになりました。
ALSなど重い障害のある人を支援する技術は年々進歩していて、患者の中には、唯一動く目の視線を読み取ることでタブレット端末などを操作して、会話や仕事をしている人もいます。以前に比べてコミュニケーションの問題は少しずつですが改善されています。
手助けがあれば“生きられる”

去年12月、手術前日の朝。清さんは夫や家族と病院へ向かい、入院の手続きを済ませました。大きな手術を控えても笑顔を絶やさない清さん。手術には仕事で立ち会えない夫の雅英さんが、この日は一日中、病室を離れようとしない姿が印象的でした。

手術当日。自分の声が出る最後の瞬間に、清さんは夫やお世話になった人に動画でメッセージを残しました。
夫の雅英さんには「手術の時間が決まりました。父ちゃんは仕事に専念してください」と笑顔で語り、2時間におよぶ手術に臨みました。

その翌日、病室に戻った清さんののどには人工呼吸器がとりつけられ、声は出なくなっていました。たんが絡んで苦しい時など、自分の意思を伝えづらいもどかしさを感じながらも、声が出ない現実と向き合い始めていました。

手術を終えて4か月。自宅に戻っていた清さんに再び話を聞きました。
声が出なくなった分、周りの人とのコミュニケーションには以前よりも時間がかかるものの、アプリで文章を入力している間は周りの人が待ってくれるため、その負担もあまり感じないと言います。

今後も症状は進行していきますが、手術前と変わらない笑顔で毎日を過ごしている清さん。自分の姿を通して「難病でも手助けがあれば暮らしていけるということを伝えたい」と話してくれました。
【最後に】
ALSの患者さんや周囲の人を取材していてよく耳にするのが、自分の人生を「生ききる」という言葉です。
「できることが限られていく中、呼吸器をつけるつけないに関わらず、人生を充実させて後悔なく生きる」という意味だと理解しています。
ただ地方では、「介護の態勢が十分ではないから」「コミュニケーションがとれないから」、こうした理由でその人らしく「生ききる」ことをあきらめるという声も少なくありません。
当事者の声が世の中に少しでも届くように、今後も道内の患者さんに取材を続けさせていただきます。

(2020年4月27日 放送)
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April 30, 2020 at 03:57PM
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