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<口唇裂の子と育つ>(下) 2度目の手術 - 中日新聞

柱の身長計で三男(中)の背を測るほかの3人のきょうだい=東京都内で

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 昨年九月三十日、三男(2つ)が東京都内の病院に入院した。唇が裂ける先天性の病気「口唇裂(こうしんれつ)」の二度目の手術のためだ。初回は生後二カ月半の時。上唇の割れ目をふさいだ。今回は、少し赤く腫れていた手術痕を目立たなくすると同時に、ややゆがんでいる鼻を整える整形手術だ。

 直前まで病室が大部屋か個室か分からず、夫婦でやきもきしていた。個室は家計を圧迫する上、妻(39)が付き添い入院する必要もある。そうなると、上のきょうだい三人の面倒をどうするかという問題が出てくる。

 運良く空きが出て大部屋に入れた。だが三男が母親と離れ離れになるのは初めて。つらい九泊の入院生活を送ることになった。

◆「パーさん!」後ろ髪引かれ病室出る

 入院翌日の手術は成功。それでも術後の鼻と上唇の傷口は赤褐色で痛々しく、胸が張り裂けそうになる。三男には指しゃぶりの癖がある。傷口に触れる恐れがあり、手が口に届かないように腕を伸ばした状態で固定する道具を着けている。自我も芽生え始めた分、なおさらふびんだった。

 妻は毎日見舞いに行き、政治部の記者である私(39)もできる限り顔を出した。病室に入ると、うつろな目で記者を見る三男が身動きできずにベッドに横たわっている。言葉でうまく伝えられないので、目で拘束を解くよう訴えてくる。許可を得て外すと、今度は抱き付いて離れない。事情も分からぬまま見知らぬ病室に取り残され、さぞかし心細かったのだろう。

 昼から夕方まで妻が付き添い、記者が夕食を食べさせる役割分担となった。仕事を切り上げて到着するのは毎回面会時間が終わる午後七時前後。看護師さんが融通を利かせ、時間超過を黙認してくれたのはありがたかった。

 この間、過大な配慮をされるだろうから、三男の入院を上司や同僚に伝えなかった。病室でパソコンを開いて仕事をこなすこともあったが、不要不急の業務は後回しにして入院期間を乗り切った。働く女性からすれば当たり前のことなのだろうけど。

 一〜二時間過ごし帰ろうとすると、三男は雰囲気を察し、記者にしがみつく手に力が入る。看護師さんに引き剥がしてもらって病室を出る。「パーさん! パーさん!」。病棟中に響き渡る泣き声が追い掛けてくる。まさに後ろ髪を引かれる思いだった。

◆退院日にハプニング ひやひやした。

 この光景が繰り返され、十月九日に退院できた。ところが、三男は帰宅直後、きょうだいと再会して大興奮。ベッドに飛び込み、置いてあったおもちゃに口をぶつけ、抜糸したばかりの傷口がパックリ開いてしまった。縫合して事なきを得たが、ヒヤヒヤした。

 三男は成長が止まる二十歳ごろまで、鼻と上唇の整形手術を何度か受ける。歯茎の形成手術や歯科矯正も避けられない。手術のたびに親も子も気がめいるが、確実に良くなる。今後も山も谷もあるだろうが、家族が「ワンチーム」となって乗り越えるつもりだ。単身赴任で妻に育児を「丸投げ」するなど最も当てにならない記者が鍵だと肝に銘じて。

 (山口哲人)

      ◇

 過去の連載などは、子育てサイト「東京すくすく」でも読めます。

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May 16, 2020 at 03:04AM
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