初めての日本産の内視鏡手術支援ロボットの実用化が近づいている。開発するのはベンチャー企業のメディカロイド。同社はロボットを手掛ける川崎重工業と医療機器を手掛けるシスメックスが共同出資して2013年に誕生した。メディカロイドの田中博文常務は「2020年に手術支援ロボットの販売開始を目標にしている」と意気込む。
メディカロイドの田中博文常務
(写真:日経クロステック)
人の腕ほどの細さのアーム
日本を含めた世界の内視鏡手術支援ロボットの市場は、米Intuitive Surgicalの「da Vinci(ダビンチ)Surgical System」がほぼ独占している。メディカロイドはこのダビンチ1強の市場に日本産の内視鏡手術支援ロボットを投入することになるため、その動向に注目が集まる。他に内視鏡手術支援ロボットを開発している日本の企業の例としてはリバーフィールドとA-Tractionがある。
日本企業の中ではメディカロイドが最も早く内視鏡手術支援ロボットを実用化するとみられる。メディカロイドの手術支援ロボットはダビンチと同様に、ロボットアームに支えられた手術器具を専用の装置に座った医師が操作するマスタースレーブ式。「ロボットには川崎重工業の産業用ロボットの技術を応用した。工夫したのはロボットアームだ」と同社の田中常務は説明する。手術支援ロボットには数本のロボットアームがついており、術中にそれらが干渉しないようにあらかじめセッティングすることが重要となる。田中常務は「ロボットアームの関節を増やしたことでアーム同士の干渉を抑えている。またアームの太さは人の腕くらいに細くしており、設置スペースを小さくできる」と話す。
メディカロイドは手術支援ロボットの販売だけではなく、支援サービスも合わせて展開していく考えだ。「利用者に安心を届けたい」と田中常務は強調する。シスメックスが機器を遠隔からモニタリングして故障予測や遠隔からメンテナンスするサービスを応用し、外部から手術支援ロボットの状態をモニタリングする。ロボットの状態が万全ではないことが分かれば、術前に病院に連絡してメンテナンスするなどして対応する。さらに田中常務は「ロボットの稼働時間などのモニタリングを通して、病院に手術時間を短縮するなど効率を上げるための提案をしていくことも考えている」と明かす。
ロボットは川崎重工業の明石工場で製造する。今後の販売開始に向けてトレーニングセンターの設置を検討しており、日本では2カ所程度開所する方針だ。
メディカロイドは第1弾の手術支援ロボットの開発にめどをつけており、早くも次世代の手術支援ロボットの技術開発にも着手した。2019年11月に手術支援ロボットにAIを使ったソフトウエアの搭載を目指してオプティムと業務提携したことを発表。「今後はいかに手術中の執刀医に情報を提供するかを考えていきたい。そのためにはロボットから得るデータの蓄積が重要だ」と田中常務は話す。手術支援ロボットの未来について「ロボットは本来自動で動くもの。将来的には手術の一部の工程が自動化されていくだろう。外部の企業とも積極的に連携し、ロボットを基盤に手術室を丸ごと手掛けるプラットフォームを構築したい」と田中常務は展望する。
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