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「世界一の名医」の白内障手術を、医療ジャーナリストの自分が受けてみた - MSN エンターテイメント

写真はイメージです Photo:PIXTA © ダイヤモンド・オンライン 提供 写真はイメージです Photo:PIXTA

筆者は普段、医療ジャーナリストという立場で医師や患者に取材している。その私が長らく密かに悩み続けていたのが白内障だ。幸いにも、世界的にも有名な赤星隆幸医師(秋葉原白内障クリニック)の手術を受ける機会があったので、「目の愛護デー」でもある本日、その経験を書いてみた。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

患者数は2600万人以上

しかし手術は年間100万人

 1人で入った居酒屋でも、気が付くとワイワイガヤガヤ、大将や居合わせたお客さんたちと病気談義の花が咲くことが多々ある。最近多い話題は白内障手術だ。自分自身7月に受けたばかりで類は友を呼んでしまうのか、「僕も(私も)受けたよ」という人にやたらと出くわす。

 私も含め、共通しているのは「本当に受けてよかった。ブラウン管テレビから4Kになったくらい違うね」という感想だ。手術して元通りになった…ではなく、病気になる前よりよくなったと言う。こんな治療法は珍しいのではないだろうか。

 白内障は、眼球内でカメラのレンズの役割を果たす「水晶体」が劣化して濁り、光をクリアーに通さなくなる目の疾患だ。40代から発症し、70代ではほぼ90%、80代になると白内障でない人を探すほうが難しいとされ、予防法はない。2020年9月1日現在、日本の70歳以上の人口は2788万人(https://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/202009.pdf)、なので単純計算すると高齢者だけでも2600万人以上の患者がいることになる。

 世界的に見れば失明原因のトップだが、日本では最適な時期に適切な手術をすれば確実に治せるため、年間100万件の手術が行われている。決して少ない数字ではないが、患者数から見ればかなり少ない。白濁した視野のまま暮らしている高齢者が膨大な数に上ることを、遅ればせながら私は、自分が白内障になってみて初めて実感した。

 実際、患者になってみると白内障は非常に気持ち悪く、かつ不便だ。

 50代半ばで発症し、一番困ったのは異様なまぶしさだった。太陽光が前方から目にあたると、視界が真っ白になって見えにくい。光の方向から来る人の顔はまったく分からないし、自転車走行は危険でできない。なので夕方、太陽が沈む方向へ進む際は自転車を降り、うつむいてトボトボと押して歩いた。取材相手の顔も、光の方向に座られると全く見えなくなった。

 メガネで矯正しても治らない、乱視のような症状もあった。50mほど先にいる人は1人でも3人に見える。夜空に浮かぶ月も3つ。数字の6と8、8と9の区別がつかず、確定申告の時期には大きな虫メガネが必需品。

 しかし今年に入り、症状が悪化してくると、拡大しても判別しがたいことが増えた。プロジェクターを使用してのプレゼンテーションも苦労するようになった。出張で土地勘がない駅に夜降り立つのは恐怖だった。メガネをしても、蛍光灯に映し出される案内板の文字が読めない。スマホのアプリも、画面から出る光のせいでほとんど見えない。仕方なく、近場であるにも関わらずタクシーを利用した。いつの間にか視界はどんどん濁り、周囲はほぼ擦りガラス越しに見るような風景に変わっていた。

 そうして5月、もう限界と感じた私は白内障手術を受ける決意をした。

白内障だけでなく

老眼も乱視も一度に治せる

 赤星隆幸医師(秋葉原白内障クリニック)は、世界で最も評価されている白内障手術の名医だ。先生が開発した「フェイコ・プレチョップ法」(濁って硬くなった水晶体の核を、あらかじめ、超音波で乳化する前に砕いておく術式)は、白内障手術の常識を刷新。従来は眼球を1センチも切開して行っていた手術をわずか1.8ミリの切開でできるようにし、片目20分以上かかっていた時間を3~4分に短縮。目への負担を最小限にすることを追求した結果、点眼麻酔、日帰り、手術による乱視発生をなくす、早期の視力回復等が可能になった。

 何度も取材し、実際の手術を何度も見せていただいたが、術式・手技の正確さに加え、器具、スタッフの動き等、これほど洗練された手術があるだろうかと感嘆し、(自分が手術してもらうなら、赤星先生以外には考えられない)と決めていた。

「うわぁ、これは大変ですね。ずいぶん我慢していたのではないですか」

 初回の診察で言われた。白内障にもいろいろと種類がある。最もポピュラーなのは水晶体のまわりの部分の皮質から濁りが生じる「皮質白内障」。濁りが瞳の真ん中に到達するまでは、まったく症状がおこらない。

 一方、私の場合は「核白内障」といって、水晶体の真ん中の核の部分からだんだん硬くなり、茶色く濁ってくるタイプ。診断がつきにくい上に、発症すると一気に見えなくなり、進行して水晶体がガチガチに硬くなると手術の際にさまざまな支障が生じやすい、やっかいな白内障だった。

 早めに手術することになり、まず決めなくてはならなかったのは、濁った水晶体の代わりに挿入する人工の「眼内レンズ」の種類だった。白内障の手術は一生に一度しかできない。一度移植された眼内レンズは交換できないので、レンズ選びは慎重に行う必要がある。

 レンズには大きく分けて「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」の2種類がある。「単焦点眼内レンズ」は遠・中・近のいずれかを選んでピントを合わせる。見えにくい距離については、手術後に眼鏡で補正することになる。

「多焦点眼内レンズ」は、以前は遠と近の双方にピントが合うように作られた2焦点レンズが主流だったが、現在は遠くから近くまで落差なく、スムーズにピントが合う3焦点レンズが登場。乱視を矯正する機能がついたトーリックレンズも開発され、一度の手術で、白内障だけでなく、老眼も乱視も解消できて、メガネが不要になる時代が到来している。

 これらのレンズを自由に選べるのなら、迷うことなく「3焦点レンズ」にするべきところ…だが、悩ましいのはその価格。

 単焦点レンズは保険適用なので両目で10万円程度で済む。しかし、3焦点レンズは保険適用外の自由診療となるため、両目で70万円から120万円以上。保険適用外の治療を保険適用の治療と併せて受けることができる選定療養対象のレンズでも3焦点は60万円以上、2焦点で26万円にもなる。

 また赤星先生のクリニックでは扱っていないが、最近は保険適用の2焦点(遠と中にピントが合う)眼内レンズ「レンティスコンフォート」が参天製薬から発売されており、片目5万円前後で手術を受けることができる。発売から間もないため、扱っている医療機関が少なく、乱視対応のトーリンクレンズも未発売ではあるが、2019年の11月には製造承認が下り、既に販売承認も取得済とのことで、2020年度中には正式発売される予定だ。保険診療でも、メガネがほとんど不要になる可能性があるというのは朗報なのではないだろうか。

 さて、話を戻そう。

 もともと近視のある人なら、単焦点レンズでも十分生活の質は高まるようで、以前赤星先生の手術を受けた女優の中村珠緒さんは「大げさじゃなく、人生が変わります」と大感激していた。単焦点でも2焦点でも、満足はできるようだ。だが、私は小さい頃から視力が抜群によく、白内障を発症する前まで2.0でメガネにはなじみがない。加えて、これまで仕事で最先端・最高峰の手術とレンズを取材し、紹介してきた手前、「今ある最も優れたレンズを入れるのが筋」ということになり、思い切って「世界最高峰の3焦点トーリック(乱視矯正)レンズ」を入れてもらうことになった。

予想外にチン小帯が弱かった

医師の一言にドキドキ

 手術当日、朝一で病院へ行き、検査と赤星先生の診察を受け、手術用のガウンを羽織り、マスク・手術キャップを被ってオペ室の隣で待機した。腕には抗生物質の点滴、待っている間は看護師さんから10分おきぐらいに点眼薬を差してもらい、目と心の準備をする。

 いよいよオペ室に入ると手術用のリクライニングチェアが2台あり、左側に座って点眼麻酔。隣では、前の順番の患者さんが手術を受けている。キュンキュンと低いうなりをあげているのは、乳化した水晶体を吸い出す器具の音だろうか。他人が手術される様子は何度となく取材してきたが、いざ自分となるとぜんぜん勝手が違う。実は怖くて、前夜はほとんど眠れなかった。

「はい、お待たせしました。こちらへどうぞ」

 声をかけられ、看護師さんに支えられて隣の椅子に移動。点滴、血圧計、心電図につながれ、顔には手術用の布をかけられた。目のところにだけ穴が開いている。瞬きできないようがっちりと器具で瞼を固定され、角膜内皮細胞を保護するためにゼリー状の液体を注入された。

「照明をじっと見ていてくださいね」「切開します」「超音波をかけるのでちょっと押される感じがしますよ」など、逐一説明を受けながら手術は進む。すると

「あれ、チン小帯がかなり弱いですね。驚いた。目をこする癖はありますか。水晶体を固定している蜘蛛の巣の様に細いチン小帯という組織が弱くなり、眼内レンズがズレてしまうので、目をこする癖のある人は注意が必要なんですよ。それに核が硬い。断裂しないよう、ゆっくり、そーっと進めますね」

 思いがけない言葉に緊張し、ドキドキしてきた。耐えられないほどではないが、重たい痛みがある。気が付くと、誰かが左手を握ってくれている。看護師さんだろうか。水晶体が取り除かれると、手術用顕微鏡の3つの照明は完全に見えなくなり、視界は真っ白でもはや光しか感じない。

「眼内レンズを挿入します。押される感じがしますけど、目は動かさないでくださいね」

 複数のゆがんだ光の輪が映り、一気にくっきりとした像を結んだ。眼内レンズが入るべき場所に入ったのだ。

「右目は終わりましたよ。続いて左目の手術に入ります。チン小帯が切れないようゆっくりやりますからね」

 かくして、手術は無事終了。出血はゼロ。布を取られ、上体を起こすと、椅子の前方に置かれた時計が見えた。どうってことない普通の薄暗い手術室なのに、すごくくっきりと、キレイに見えた。

「見えますか、時計は今何時ですか」

「すごいキレイに見えます。○時△分ですね」

「そうですね、では、あちらの時計はどうですか」

 離れたところにある時計もはっきりと見えた。手術室に入ってから、20分ぐらいだったろうか。隣の部屋に移り、看護師さんにガウンを脱がせてもらい目を保護するためのゴーグルを装着してもらった。

「クリーム色」だと思っていた愛犬が

真っ白い犬であることが判明

 手術当日は大学生の娘に迎えに来てもらい、クリニックの近くのホテルに泊まった。何かあったらすぐに受診できることになっている。

 翌朝、午前中に診察してもらうと、経過は良好で両目ともすでに1.0(手術前は0.8の1.0)まで回復していたが、感動したのは見え方だ。ぜんぜん濁っていないし、人も1人はちゃんと1人に見える。さらに、手術前には気が付いていなかった、色の濁りがクリアーになったことも分かった。

 帰宅すると、なんと、愛犬の毛が真っ白だったのだ。半年前から飼い始めたトイプードルとビジョンフリーゼのミックス犬なのだが、ゴールデンレトリーバーのようなクリーム色の犬だと思っていた。

 視力は1カ月後には両目とも1.2に回復し、この数年抱えてきた見え方の悩みはすべて解決した。しばらくの間は散歩しても、買い物に出かけても、見るものすべて美しく見えて感激していたが、ひとつだけ非常に残念なことがあった。

 それは自分の顔や手が、結構しみだらけであることが分かったことだ。しわもくっきり見えるではないか。がっかり。これだけは、見えない方が幸せだったかもしれない(笑)。

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October 10, 2020 at 04:00AM
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