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70代男性の8割にみられる前立腺肥大症 手術のリスクを抑えるには - MSN エンターテイメント

(イラスト/今崎和広) © AERA dot. 提供 (イラスト/今崎和広)

 加齢にともなって内腺という部分が肥大してくることで尿道を圧迫し、排尿にかかわるさまざまな症状を引き起こす前立腺肥大症。70代男性の8割にみられる。5割以上の患者は薬物療法で症状を軽減できるが、服薬を続けても症状が続く場合には、手術も選択肢の一つだ。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、さまざまな手術法とそのメリット・デメリットについて、専門医に話を聞いた。

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 薬物療法は前立腺の大きさを元に戻して正常化することはできない。服薬を続けても加齢による膀胱機能の低下も加わり、いずれは排尿症状に悩む事態に陥る。そのとき考慮されるのが肥大した前立腺を切除する手術だ。

 現在、主におこなわれている手術は、(1)経尿道的前立腺切除術(TURP)、(2)ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)、(3)光選択的前立腺蒸散術(PVP)の3手術法だ。

 いずれも内視鏡を用いる。陰茎の先から器具を挿入し、尿道から前立腺にアプローチする。皮膚切開による開腹手術は現在はあまりおこなわれていない。

 三つの手術法は(1)=削り取る、(2)=くりぬく、(3)=蒸散させる、という表現で表されることが多い。

 TURPは、電気メスで肥大した前立腺(内腺)を、帯状に切除して取り出す。前立腺切除の基本的な手術で、6~7割の病院でおこなわれている。

 前立腺は血管が豊富な臓器で、手術の際には出血をいかに少なく抑えるかが課題になる。

 TURPは出血量が多いのがデメリットだ。手術はできるだけ短時間(1時間以内)に抑える必要がある。術中は視野を確保するために、灌流液という液体で血液を流しながらおこなう。灌流液が前立腺を削り取った傷口から体内に入ると、心臓や腎臓に負担をかける合併症が起こる可能性がある。また、術中だけでなく、術後の出血リスクも高い。

 TURPでは前立腺が大きすぎると切除しきれないことがある。その場合はすべてを切除せずに、排尿症状の改善を目的にして部分的に切除する場合もある。残った部分がまた肥大してくるが、再発率は10年で10%程度といわれている。一般的に術後3~5日、尿道カテーテルが必要となり、1週間程度の入院となる。

■HoLEPは出血も再発も少ない

 HoLEPは、レーザーで、肥大した内腺と、その外側にある外腺を切り離して、内腺の部分をまるごとくりぬいて排出する。電気メスで切除するよりも術中・術後の出血が少ないのがメリットだ。また、どんな大きさの前立腺も適応になる。

「HoLEPは内腺をすべて切除するので、肥大症の再発はありません。術後、尿漏れが起こりやすいのですが、一過性のもので、術後1年たって尿漏れが残るリスクは1%未満に抑えられています。HoLEPの実績のある病院なら、術後出血のリスクもほぼゼロに近く抑えられるのではないでしょうか」(NTT東日本関東病院前立腺センター長の安部光洋医師)

 通常、手術時間は1時間弱、尿道カテーテルは術後3日目に抜くことができ、術後5日目に退院となる。

■PVPは抗凝固薬を服用中でも手術可能

 PVPは2011年に保険適用となった手術法だ。レーザーを用いて血液や水分の温度を一挙に上昇させ、組織を蒸散する。血管も蒸散させるため、出血が少ないのがメリットだ。そのため、尿道カテーテルの留置期間や入院期間は他の手術法と比べて短く、尿道カテーテルは手術翌朝に抜くことができ、その翌日に退院できる。ただ、一度の手術で蒸散できる組織量の上限が決まっているため、前立腺が大きすぎると残さざるを得ない。その場合は、TURPと同じように、排尿症状の改善を目標にする。再発率は10年で10%以下と考えられている。

「PVPは出血がきわめて少ないため、抗凝固薬の服用中でも、服薬を中断せずに手術ができるのがメリットです」(長久保病院理事長の桑原勝孝医師)

 19年には高出力のXPSという機種が保険適用になった。1回の手術で蒸散できる量が増え、再発率の低下が期待されている。また、16年には、同じくレーザーで組織を蒸散させる接触式レーザー前立腺蒸散術(CVP)も保険適用になった。現在、PVPは全国で約80施設、CVPは約40施設で受けられる。今後、普及が見込まれている。

 ただ、PVPやCVPは組織を蒸散してしまうので、TURPやHoLEPと違い、病理検査を受けることができない。前立腺がんとの鑑別をきちんとつけてから治療を受ける必要がある。

 前立腺の切除術では、どの手術法でも射精障害(逆行性射精)の合併症がゼロではない。TURP、PVPでは前立腺の一部を部分的に残すことができるので、射精機能をある程度残すことが可能な場合もある。

「若い世代での発症で、射精機能を残したい場合は、主治医とよく相談して、リスクの低い手術法を選択してください」(同)

 前立腺肥大症は患部がデリケートな部分であるため、受診や治療をためらうケースも少なくない。

「たとえ痛くなっても、痛み止めを適切に使って痛みをコントロールします。そのほうが痛みを我慢するよりも回復が早いこともわかっています。安心して治療を受けてください」(安部医師)

 両医師ともに、手術は、現在の症状の改善に加えて、先を見越して選択してほしいと言う。10年後、20年後に、寝たきりや認知症もなく過ごしているという保証はない。

「尿は最期のときまでつくられ続けます。排尿できないと管を入れることになり、認知症などではその状態を維持することが難しくなります。手術のタイミングを決めるときには、将来のことも考えて、適切な選択をしてください」(同)

(文・別所文)

≪取材協力≫

NTT東日本関東病院 泌尿器科医長 前立腺センター長 安部光洋医師

長久保病院 理事長 桑原勝孝医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より

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July 15, 2020 at 03:00PM
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