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入院生活で最もつらかったことは? 手術後の傷の痛みよりも……(読売新聞(ヨミドクター)) - Yahoo!ニュース

のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行

 下町と言われる街の裏路地に、昭和と令和がうまく調和した落ち着く小さなカフェ。そこは、コーヒーを片手に、身体(からだ)を自分でメンテナンスする工夫やアイデアが得られる空間らしい。カフェの近所の会社に勤める49歳男性の私は、仕事の合間に立ち寄っては、オーナーの話に耳を傾けるのが、楽しみの一つになっている。

(※ このカフェは架空のものです)

胃がんの手術を終えて退院した彼が

 「ずっと、このカフェのコーヒーが飲みたくて、飲みたくて……」。先日まで入院していた会社の同僚が言う。

 きょうは、同僚のたっての希望で、のぶさんのカフェへ2人でやってきた。胃がんの手術をしたばかりの彼は、同じがん患者でもある、カフェオーナーののぶさんに話を聞いてもらいたいと思っているのだろう。カウンターに座るや、のぶさんに話し始めた。慣れない入院生活で、相当にストレスはたまっていたようだ。

 のぶさんは、私が注文したコーヒーをゆっくりとドリップしながら、楽しそうに彼の話に耳を傾け、適度に返事をしている。いい香りがカウンター席にも流れてくる。胃の手術をした彼は温かいウーロン茶を作ってもらっている。

日常生活が一変 行動を制限された毎日

 「入院生活は何が大変でしたか?」

 のぶさんが彼に聞いた。胃の手術を受けるために入院したのだから、治療も大変だっただろうし、その後も痛かったことだと思う。

 しかし、彼の返事は少し違った。治療そのものや痛みの話は出てこない。病室から出られずに行動が制限されたことや、家族と会える時間が限られていたこと、さらには手術後に体が思うように動かせず、なにかとスタッフを呼ばなくてはならなかったことを、のぶさんに訴えたかったらしい。

 これまで、大きな病気をしたことがない私には、そういったことが治療よりも大変だと思う感覚が理解できない。手術することに比べたら、大したことがないように思ってしまう。

便意をがまんできないと看護師に告げたところ……

 「そうですよね。わかりますよぉ。入院生活は、本当につらいですよね」

 手術を何度も経験しているのぶさんは、当たり前のように受け止めている。

 「私は、手術後に便意ががまんできなかったので看護師に来てもらったら、ここでしてくれって言うんですよ。ベッドで。女性の看護師の見ているところで。その恥ずかしさは、いまだに忘れられませんからね~」

 のぶさんは笑いながら話す。

 もちろん、医療者や医療現場を責めているのではない。患者にとっての入院生活は、未知なる経験が多い。そのために、驚きや戸惑い、羞恥心を感じることも、たくさんあるということだ。

 私は、そういう同僚の気持ちを察することができなかったし、退院後も聞いてあげられなかった。

 「誰でも、未経験のことはわからないんですから、その場、その時で、相手のことを思ってしたのならば、それで十分だと思いますよ」と、のぶさん。

 「そうだよ。おまえがのぶさんを紹介してくれただろ。それがうれしかったんだぜ」と、彼。

 一人ひとりの役割も、立場も、知識も、能力も違う。だとすれば、それでいいのかもしれない。

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May 13, 2020 at 08:10AM
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