アクションスターとして日活映画の黄金期を支えた、「エースのジョー」こと俳優の宍戸錠さんが死去した。86歳だった。宍戸さんといえば、丸く膨らんだ両頰がトレードマーク。実はこの頰は、自身の決断で踏み切った整形手術で生まれ、役者としての活路を切り開いた。宍戸さんの役者魂が詰まった頰の歴史を、毎日新聞の過去記事を基に振り返る。
日大在学中の1954年、20歳の時に日活の第1期ニューフェースに合格。当初は線の細い二枚目スターとして売り出された。宍戸さんは23歳の時に最初の整形手術に踏み切り、2年後に2度目の手術を決行する。
のちに宍戸さんは整形した理由について、「映像になった宍戸錠の顔を、自分の中で理想としている宍戸錠の顔のイメージに近付けること」にこだわったと説明。「当時は、俳優としての内面の変化よりも、外形的な顔の形態の変化を求めたわけですよ」と答えている。
この決断は吉と出る。日活のアクション映画の中でハードボイルドなイメージを生かし、アクの強い役が次々と舞い込むように。「エースのジョー」と呼ばれ、親しまれた。路線変更に見事に成功したといえる。ただ、のちの取材には「それはそれでいいんですが、一方ではもし整形しなかったら、もっとすごい俳優になれていたかもしれないっていう意識も常にあったんですよ」と打ち明けている。
宍戸さんは2001年3月、3度目の手術に踏み切る。今度は摘出手術をして、44年10カ月付き合ってきた、頰を膨らませていた物体を除去した。俳優としての一時代を築いた顔だけに、家族や事務所には強く反対されたという。それでも踏み切ったのは、やはり役者としての「顔」へのこだわりだった。
「理由の一つに、僕は70歳を前にして普通のジジイの顔になりたくてやっただけ。というのも、3年続けて脳卒中や脳梗塞(こうそく)で倒れるというテレビドラマの役をやったことがあって、倒れるまではいいんだけどリハビリの時には(頰が膨らんでいると)元気すぎて難しいんですよ。前のままでもできるけど、自分の中でそれは違うという感覚があって。で、取ってしまって、老人顔のきちんとしたものをやってやろうと思ったわけです」
強い役者魂を感じさせるエピソードだ。自分が目指すべきイメージがあり、どこまでも前向きで計画的なところが宍戸さんらしい気がする。【佐々本浩材】
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January 21, 2020 at 05:25PM
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宍戸錠さん死去 トレードマークの両頰 3度の整形手術に踏み切った理由とは - 毎日新聞 - 毎日新聞
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