
こんにちは! もうすぐ乳がんの手術だと緊張していたひとり暮らしの人間のコヤナギユウと、進行性とおぼしき乳がんが見つかって先に緊急手術を終えた拾い猫のくるみです。
……情報量が多すぎる!(コヤナギユウ)
走って逃げようと思えるくらい元気
入院当日は健康そのものといっていいほど元気です。天気は梅雨前の好天ですがすがしく、ビールでも飲みたいところでしたがグッと我慢。留守番する猫の面倒を見るために母が上京し、母ひとりでは心細いとのことで兄も召還。入院するわたしと3人でお医者さんの話を聞いて、入院するベッドを案内してもらいます。
翌日の手術を控え、最後の検査。血液を採ったり、がんの転移が多いとされるリンパ節の場所を調べる注射を打ったり。あとはたくさんの同意書にどんどんサインしていきます。次々に医者が現れてなにかと忙しいです。手術は14時から、およそ4時間くらいと決まりました。
一息ついてTwitterを見ていると、明日はテレビで実写版「美女と野獣」を放送するとのこと。見てみたいと思っていました。映画が始まるころには手術は終わっているはずです。わたしは明日、この映画をテレビで見られるのだろうか、どんな気持ちで見ているのだろうか。手術が迫ってきた実感はわいてきましたが、想像はできません。
21時から絶食が始まりました。まずは「朝6時までに飲みきるように」と、りんごジュース(鉄分入り)1杯、アルジネードウォーター(栄養ドリンク)125ミリリットル、OS-1(経口補水液)500ミリリットルを渡されちびちびと飲みます。そして、朝の8時にも同じものをもらって2時間ほどで飲みきり、手術までは絶水です。全然喉なんか渇かないはずだけど、水を飲んではいけないくらい手術が近い、という緊張感で喉が渇きます。
パジャマから病衣に着替え、全身麻酔時の血行不良を防ぐ圧着タイツを履き、珍妙なT字帯パンツを履いて出陣。自分の足で普通に歩いて、いざ手術室!
手術室の前にはパソコンを前にした看護師さんが控え、わたしの名前と手術内容を確認し、入室します。まるで人気のレストランで予約確認するエントランスみたいです。
部屋に通されて、手術室の中央に鎮座したわたし専用のステージを目の前につい「うわあああ~」と変な声を出してしまいました。医師達はハキハキとしつつも、こちらの緊張を汲んで、ペースを見ながら説明してくれます。手術台に座り、足の位置を合わせてからベッドの上半身を起こし、胸の高さを見ます。今回は左乳がんを摘出後、すぐにシリコンを入れてしまう「一次再建」なため、一発勝負なのです。手術で乳首の位置が大きく変わってしまわないように、油性ペンでいろいろな印を書いてくれます。油性ペンはふつうのマッキーです。一通り印を書いてもらったら、また寝そべるのですが、絶対に腰を浮かせないように、そのまま、変な感じでも座り直さないでと念を押されて横になります。どうやら、手術中にも起こして位置を確かめるため、同じ条件を保つ必要があるようです。確かに生理的に腰を浮かせたい、でも乳首のためです、理性で耐えるのだ。
マーキングされ、手術台に寝そべり、麻酔用の点滴が刺されました。いよいよです。わたしはとにかく不思議な気持ちでした。だって、今すぐ逃げろといわれたら、腕を振り払って上体を起こし、全速力で走って逃げられるくらい元気です。でもそんなことはしません。わたしは偉いのです。
シュコーっとささやかな音をたてたマスクが、軽く口にあてがわれます。「少しずつ麻酔を入れはじめましたからね~。眠くなりますよ~」と声を掛けられ、意識がぽわんとしていくのを感じます。すぐに視界の外側が水に入ったように歪みました。ちょうど、仰向けになって、穏やかなプールに、沈んでいくように…。とぷんっ、とでも音が鳴ったような気がしました。
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March 28, 2020 at 11:10AM
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乳がん手術! 我々はひとりだけど、ひとりぼっちじゃない!(未婚のひとりと一匹と:最終回)(DANRO) - Yahoo!ニュース
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